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2012 03,07 19:11 |
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貧しさは悪なのか。
ツルネは孤児だった。 小さな村に住み、仲間と盗みを繰り返す、非生産的生活の連続。 人を殺したこともある。 ツルネが8歳の頃だ。 ある日ツルネは賑やかな旅団に遭遇する。 金の匂いがした。 ツルネの盗賊のスキルは村でも一番。 今回の仕事も簡単にすむ そう思っていた。 「で、ボウズ。お前、金が欲しかったのか、飯が食いたかったのか、どっちなんだい?」 見事に捕まってしまったツルネに、その男は優しく語りかけた。 「殺せよ!オレを殺せ!」 「そうだなぁ、それがお前の望みならそうしたいんだが。 お前の望みはそうじゃないだろ?」 「・・・・・・」 「お前の欲しいもの、なんでもオレが与えてやる。どうだ?何が欲しい?」 「・・・・・」 ツルネは 孤児だった。 人を 殺したこともある。 「お前、名前は?」 わらぶき屋根の 薄汚れた小屋で 仲間と過ごす。 それがツルネの日々。 それがツルネの人生。 「・・・・・名前なんか・・・ない・・・」 両親の顔は知らない。 名前もしらない。 「そうか。おいアルネ、お前こいつに名前つけろ。得意だろそういうの」 「ん~・・・・ツルツルツルネ!!頭がかわいいもんw」 ツルネ。ふざけた名前で呼びやがって。 そんな名前、オレはいらない。 「オイお前、今日からツルネな?」 いらない。 そんな名前いらない。 「お前に未来を見せてやる」 ない。 そんなもの ない。 光に包まれて、ツルネは自分の未来を見る。 温かなスープ。笑顔、仲間。 「・・う・・うぅ・・・・・・」 涙が溢れて止まらなかった。 「なんで・・・なんで・・・」 今まさに盗みを働こうとした自分に、 どうしてこの男は優しいのか。 ツルネには理解できなかったが、 それこそが、ツルネがずっと欲しかったものなのかもしれない。 「理由が必要かい?それはなぁ、お前が大人になったら自分で探せ」 「・・うわぁ~ん!!」 ツルネは旅団の仲間になった。 ドサリ。 デリートの腕が地面に落ちた。 ブラーニンも地面に倒れたが、まだ意識はあるようだ。 「ブラーニン様!!!!」 黒く光るナイフを構えたツルネが叫んだ。 「・・ネズミか・・。私の腕を切り落とすとは。ふざけたネズミだな・・」 「ふん!」 煙幕をはったツルネは、更に分身し、デリートをかく乱させる。 あたり一面真っ白な煙でつつまれた。 「ブラーニン様!ここは一旦引きましょう!」 ツルネの背後でおぞましい気配がした。 「逃げられないし、この腕の代償を払ってもらう」 「くっ!」 振りかえりざまにナイフと上段蹴りのコンボを叩き込んだ。 しかし。 ツルネの右腕と、右足が、消えてしまった。 「なっ!?・・・・それがどうした・・・・・・・粉塵爆破!」 ツルネは冷静に火花を起こし、あたり一面に広がった煙幕を爆発させた。 そして腰のポーチから小瓶を取り出した。 それを地面に投げ割り、ブラーニンの手を左手で握り締めた。 爆発がおさまると、そこにツルネとブラーニンの姿はなかった。 地面に転がる自分の腕を拾い上げ、 デリートは切り落とされた傷口にくっつけた。 ギュ、ギュ、と回しこむと、腕は元通りになった。 「・・・フン」 デリートは立ち去った。 空中を漂う塵が集りだし、何かの形を形成しはじめる。 それは腕と足の形になり、 地面に落ちた。 壮絶な戦いが繰り広げられた場所に、ツルネの腕と足が置き去りとなって、 長い夜が明けようとしていた。 PR |
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