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2012 02,29 17:43 |
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その国の豊かさや幸福度は、その土地に住む子供達の笑顔に起因する。
私が考える人間にとっての幸福。それはとても単純なものだった。 春には花を摘み、夏には海で泳ぐ。秋には料理祭、冬には雪だるま。 いくつもの景色の中に、いくつもの笑顔がある。 ”エランシア”という大国は、そういう国であった。 私はコックとして働いていた。毎日のように街中で目玉焼きを作り、 子供たちに食べさせていた。この町では裕福な者もそうでない者も、 みな目玉焼きが大好物だった。 「クラマさん目玉焼きちょうらい!」 「よ~しあげようwハイどうぞ。真面目にクエストこなすんだぞボウズ」 「うん!」 今思うと、私が子供たちに何かを与えていたのではなく、私は貰っていたのだ。 平和を。笑顔を。幸福を。 そんな当たり前のことを、私は今ようやく理解した。 そして、二度とは戻らぬ平和を、笑顔を、幸福を、私は心の奥深く、 暗く蠢く憎しみの淵に、置いて歩き出そうとしている。 「クラマ!!大変だ!政権が倒れたぞ!!」 職人仲間のポンチョが慌ててやってきた。 「アップデート盗賊団が、王家を乗っ取ったんだ!!」 「まさか!騎士団はどうした!?」 「・・・全滅だよ・・・。既に国を去りだした職人も大勢いるぞ!」 「なんてこった・・・・」 アップデート盗賊団。 どこからともなくやってきては、国中に甚大な被害を与えてきた盗賊団。 まさか政権を倒すとは思っていなかった。 「GMもみな処刑された・・。この国はもう終わりだ・・・」 私は泣き崩れるポンチョの肩を叩き、慰めるしかなかった。 「団長は今どうしてる?」 「団長は戦いの準備をしてるぜ・・。おい、お前まさか・・」 「ああ、戦うぜ」 我々職人の多くは、”ギルド”と呼ばれる私設組合に所属している。 私が所属するギルドの長は”団長”という名の武闘派コックだ。 人望も厚く、とにかく強かった。 私は団長の元へ行った。すると既に数名のギルドメンバーが、 戦いの準備をしていた。 「ようクラマ。お前も死にに来たのか?」 「団長・・・・。自分、ついていくっす!」 仲間のポックリが冷やかしてきた。 「おいおいクラマ。お前のLvじゃ、あっというまに”目玉焼き”になっちまうぞw」 「ポックリ・・・お前に言われたくねえよww」 「あん?この前のPvPはたまたまお前が運がよかっただけだ!つか魔法禁止な!」 当時、”パラス”と呼ばれる魔法石の発見は国中を賑わしていた。 ”相手を動けなくする”という強烈な魔法を生み出すこの石は、高値で取引され、 私もさっきまで鉱山にこもってこの石を探していたのだ。 「お前らケンカするなwwクラマ、いいのか?今度の狩りは、今までのものとは違うぞ?」 「団長、やるっす。あいつらの好きにはさせないっす」 戦いの準備を終えた我々に、団長が激を飛ばした。 「いいかお前ら!俺たちゃコックだ!コックってのはな、民に笑顔を食わせるもんだ! 今その笑顔を奪っちまおうっていうバカ共がいる! 国は俺たちが守る!いいか!命かけろ!!」 王国の存亡を賭けた、コックの戦いが始ろうとしていた―。 PR |
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